宗教に基礎を置く学校では、その精神に基づいた生活や学校行事が行われており、それが学校の特色ともなっています。「宗教」の授業などもそのひとつといえます。採用の際に「信者もしくは宗教教育に理解のある者」などの募集がなされることからもわかるように、必ずしも信者でなければ教員になることができないということはありません。
いうまでもないことですが、私立学校は建学の精神が学校によって異なります。その精神のなかには宗教に基礎を置くものも多くあり、宗教の授業が設置される学校もあります。これらの特色は宗教に基づく学校行事とも相まって、それぞれの学校の大きな魅力となっています。なかなか知ることができない宗教教育および行事の内容について、少しではありますが見ていきたいと思います。
キリスト教に基づく学校の場合
キリスト教に基礎を置く学校の場合、カトリックかプロテスタントかによっても異なる点はありますが、礼拝朝礼などの時間がおかれていることがあります。礼拝朝礼 の実施は週1日程度から毎日まで、学校によって大きく異なります。日々の生活のなかでも朝礼や終礼での「祈り」の時間が設けられている学校や、授業の前後に全員で十字を切る学校などもあります。また、週1時間程度、中学校・高等学校の宗教の教員免許を所持した教員によって行われる「宗教 」の授業が設置されている学校も多くあります。また、その建学の由来から、フランス語や英語、音楽といった科目が充実していることが多いのも特徴と言えます。キリスト教に基づいた行事として、学期ごとなどに行われるミサや、クリスマスコンサート、近隣の教会への訪問、「修養会」や「静修」などとよばれる宿泊を伴う行事などがあります。また、これらの学校では建学の精神に基づいて修学旅行先が決定されているところも多く、例えばフランスのシスターにより建学された学校ではフランスへの修学旅行を実施していたり、キリスト教と縁の深い九州への修学旅行が実施されていたりします。
仏教に基づく学校の場合
仏教系の学校の場合、朝礼で黙想のほか、般若心経の読経 などが行われているところがあります。また、授業前に黙想を行っている学校もあります。キリスト教系の学校と同様、週1時間程度、中学校・高等学校の宗教の教員免許を所持した教員によって行われる「宗教」の授業が設置されている学校も多くあります。学校行事としては、高野山などで高僧の講話を聞いたり、写経などをする宿泊行事を行ったりしている学校 や、仏弟子としての戒めを授かる「授戒」とよばれる行事が行われる学校 もあります。その他、その宗派で行われる祭礼に男子生徒が心身の鍛錬も兼ねて参加するという学校 もあります。
信者でなければ教員にはなれない?
私学で働くことを希望する人が最も気になる部分が、この「信者でない場合はその学校の教員になれないのか?」ということだと思います。例えばキリスト教系の学校の場合、採用の条件として、「キリスト教信者、もしくは本校のキリスト教教育に理解のある方」 などの表記がなされることがあり、キリスト教の信者でない希望者にはハードルが非常に高く感じられるかもしれません。しかし、私学の現状としては学校内にその宗教の信者の先生が必ずしも多いわけでなく、逆に信者でない先生の方が多くなっている学校もあるほどです。また、その宗教についての知識がないために不安に思う方もいらっしゃると思いますが、新任の教員に対してその宗教の研修を行っている学校もあります。ですので、必ずしも信者でなければその学校の教員になれないわけではなく、働き始めてからその宗教についての知識を身に付けることもできるようになっています。
ここまで学校における宗教教育ならびに宗教行事について見てきました。上に挙げた以外にも神道 に基づく学校などもあり、学校によって本当にさまざまなので一概にいうことはできませんが、建学の精神と深く結びつく学校行事などが実施されていることが、私学ならではということができます。信者であるかそうでないかにかかわらず、私学の先生となった際にはぜひ行事の背景を理解したうえで、生徒たちの指導にあたるとよいでしょう。